先日某英語論文がJournal of Foot & Ankle Surgery (JFAS)にめでたく三度acceptされました。今回の英語論文は私が最も力を入れている関節温存手術(joint-preserving osteotomy procedure)だったので、当院の成果が世界に認められたのはこの上ない喜びです。
2014年9月21日… 私のランニング日記を振り返ると、どうやらこの日から論文を書き始めたようです。まずタイトルを決めてから、参考文献を取り寄せ、ひたすら読みまくる… 。ちなみに当院は英文・和文論文とも国内で入手可能な論文は全て病院負担で取り寄せられるので、小規模な病院の割に学術活動に関しては恵まれています。英語論文をネットでダウンロードすると、1件につき30~35$もかかるので私の懐も大変助かっています(^^)/。一般にEditor Kickを回避し、好印象を与えるには、とにかくCover LetterとIntroductionが重要なので、特にこのセクションでは足りない私の脳ミソをフル回転させました。
11月30日 草稿完成… 一通り書き終えたところで、論文がやたらに長くなっていることに気づきました。当初は他誌に投稿予定でしたが、どれもOriginal Research Articleは4,000 words前後のwords limitがある(ToT)/~~~。5,935 wordsと14 figuresでは、意中の雑誌(FAI?、KSSTA?)の投稿規定に端から合わないので、文字制限のないJFASに三度投稿することに決めました。今思えば論文をサラミ(2報に分割)にして、業績を水増しした方が良かったかもしれません。ボリューム的にはTechnical Tip、Original Research Article、Review Articleの3つを「ちゃんぽん」にしたような論文だし… (爆)。
12月1日 英文校正… 今回も丸善英文校正サービスLightを利用しました。
(前略) The language of your manuscript was very good. Few sentence reconstructions and word choice changes were required to achieve true native expression. Overall, your manuscript needed little intervention to achieve publishable quality. (中略) Your manuscript is now ready for publication, from the English point of view…
英文校正のプロの評価にすっかり気を良くし、今までの論文はrejectが大半でしたが、今回ばかりは「チト自信あり」と勇んで電子投稿に臨みました。ちなみに丸善英文校正サービスはqualityが高い割に、値段が手頃なのでとってもお勧めですよ。
12月9日 Submitted to Journal… さすがにJFASのElsevier Editorial Systemも3回となると慣れたものです。特にトラブルもなくスムーズに無事投稿完了。
12月17日 With Editor (MS # JFAS-14-425)… 2014年12月上旬に投稿したので、年間の総投稿数は500本前後でしょうか。 JFASへの投稿は今回で3回目となりますが、やはり年々投稿数が増加しているのがMS#でわかります。
2015年1月16日 Under Review… 担当Section Editorは米国籍の日本人(?)で、自書の論文から勝手に推測すると人工骨補填材などに詳しい方のようでした。「果報は寝て待つ」べきなので、しばらく論文のことは忘れて2月1日の別大マラソンに集中することにしました。
3月3日 Author Query (1)… 投稿後3か月が経過しましたが、”Under Review”のまま全く動きがないので、しびれを切らしてEditorと編集部双方にお伺いメールを出しました。経験上、放っとかれる場合も多々あるのであまり動きのない場合は、やんわりと突いてみるのも良いと思います。
(前略) We submitted the manuscript, JFAS-14-425, titled “Treatment of ABC With a Novel XYZ Procedure,” on December 9, 2014 for possible publication in The Journal of Foot & Ankle Surgery.
I see that the current situation of my manuscript is under review. However, we have not heard from you since then. We really don’t want to lose too much time before the publication of our work, and want to know what is causing the delay. I would greatly appreciate if you could check it and let me know the actual situation of my manuscript… (後略)
3月5日 Minor Revision… その2日後、Required Reviews Completed、Decision in Processを経ず、いきなりMinor Revisionとなりました。案の定、Review終了後に放置されていたのでしょう(笑)。
(前略) Reviewers have commented on your paper. You will see that they advised that you revise your manuscript. I have also reviewed your manuscript, and ask that you consider the reviewer comments and author queries, and make the changes that you think will make your manuscript even more meaningful than it already is, for our readers. I also appreciate your patience as we considered your report. We have worked hard to increase our available page space and to handle a great increase in the number of submissions, and we are very pleased to be able to consider your interesting report, and we appreciate your patience as we have worked with your manuscript. As soon as we receive your revised manuscript, we will move forward with it if the required details have been addressed. If you are prepared to undertake the additional work required, then I would be pleased to reconsider your report (原文ママ).
文章の後半からはEditorの日々の苦労が分かります。Reviewer’s CommentsはReviewer #1が4つ、Reviewer #2が5つの合計9つと、いづれも簡単に返答できるものばかりで助かりました。
3月10日 再英文校正… 丸善英文校正Lightに通算5回目のお世話になりました。将棋で言えば”Checkmate”の状態ですが、Response to ReviewersがPoor Englishと思われると損なので、ここはお金をケチらずに英文校正を再度お願いしました。
3月12日 Revision (R1) Submitted to Journal… これで完璧と思って送り出したはずでしたが、1週間後に出戻るはめに(~_~;)。
3月20日 Revise for Editor Alone… Editorからメールが来たので、てっきりacceptのお知らせかと思いきや… ギョギョ!
(前略) I am pleased to be able to consider publishing your report, and ask that you further revise it so that it is in compliance with our required formatting and style guidelines. (中略) The surgical content is interesting and publishable; however, the style edits are necessary still…
ガビーン、9つあったRespose to Reviewersは全てクリアしたようだが、パーセント表示などが小数点第2位まで表示されていないのがイカンらしい(3.7%ではなく3.75%とか)。加えてFive patients could not…ではなく、Five patients (6 ankles [22.22%]) could not…と表記しなければならないらしい。 当時日本創外固定・骨延長学会で六本木ヒルズにいたのですが、急に浮いた学会(医者の道楽)から現実の世界に引き戻され、頭は真っ白に。今度は”Response to Reviewers”ならぬ”Response to Editor”じゃ…
3月23日 Revision (R2) Submitted to Journal… 今度こそ完璧、2度と戻って来るなよ~、と願をかけて再度送り出しました。この時点では1~2週後にはFinal Decisionが来ると思っていたのですが…
4月3日 Author Query (2)… 実はこの頃、某K原出版から総説(整形・S害外科)の原稿依頼を受けていて、脱稿期日の5月10日が近づいていました。参考文献に本論文を追加したかったので、Editorに催促メールを送信しました。
(前略) This is with regard to our re-submitted manuscript, JFAS-14-425, titled “Treatment of ABC With a Novel XYZ Procedure,” initially submitted to your journal for consideration as an Original Article on December 9, 2014 and re-submitted on March 22, 2015.
I see that the current status of our manuscript remains “Revision Submittted to Journal.” We would greatly appreciate if you could check it and let us know when we can expect notice regarding the final decision… (後略)
その3時間後にEditorから返信が… 「論文が多すぎて、めっちゃ忙しいからちょっと待て!」ということらしい。
(前略) I am aware of this and working through many manuscripts, I appreciate your revision. We will have a decision soon. Thanks! DSM
6月8日 Accept… (゜∀゜)キター!!!! 一般に”soon”といったら数日、長くても1~2週間と思われるが、結局催促メールの丸2か月後にEditorial Decisionが来ました。論文数が多いのと、自分達の仕事もあるからこればかりは仕方ありませんね。最近の論文のarticle historyを見ると、投稿数が多すぎてacceptまでに1年かかるのもちらほらあるようです。今回は2回のrevisionでacceptまで丁度6か月なので、審査期間としては標準的だったのでしょうか。
6月12日 Offprint Order… 早っ! 出版社の仕事はさすがに機敏ですなぁ。
7月9日 Proofs available… Please respond within 48 hours… 相変わらずの48時間ルールは健在。特に変更点はなかったので、「訂正なし」で返信。
7月16日 Proof available online… 論文③の実質的なゴールに到達、長かった。7月21日にはPubMedおよびGoogle Scholarで検索可能となっており、改めて今までの努力が実ったことを実感する。
私が医師免許を取得したのは1997年で、整形外科医となった1999年から様々な脛骨骨切り術(詳しくはこちら)をライフワークとして行ってきました。今回その経験を生かした新しい知見および手術手技が世界に認められたのは、私にとってこの上ない喜びです。これも横浜市大整形外科の諸先輩方の「”巨人の星”の星一徹」並みの厳しいご指導と、対照的に「とっても優しい」共著者と病院関係者の協力の賜物ですので、この場をお借りしてお礼を申し上げます。私が15年以上前に受けたスパルタ教育(e.g., ちゃぶ台返しならぬ論文ゴミ箱?)は、現代なら間違いなくアカハラで懲戒処分でしょうなぁ(爆)。
この論文がacceptされたことにより、私の通算peer review英語論文の勝率は4割6分1厘となりました。次の目標は勝率5割を達成してAクラスに入ることとでしょうか(了)。
2015年12月18日 Print publication… 初回投稿後1年、アクセプトから6か月かかって忘れた頃にprint publicationとなった。今回は標準的な審査およびin press期間であろう。幸いJan/Feb号はfree sample issueなのでopen accessの状態、JFASに投稿してえがった。