足の外科虎の穴

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第27回日本創外固定・骨延長学会

第27回日本創外固定・骨延長学会

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先日千里ライフサイエンスセンター(大阪府豊中市)で開催された第27回日本創外固定・骨延長学会に参加しました。前日に新幹線で大阪入りし、江坂駅近くの格安ホテルに泊まりました。

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1日目… 服部緑地公園界隈を1時間ほど走り、参加登録を済ませ会場入りしました。

①脛骨遠位部骨折… イリザロフ創外固定器派のザロファー、プレート固定派のプレーター、髄内釘固定派のネイラーが宗教闘争のごとく激しい応酬を繰り返しているのがこの分野。当然創外固定の学会なので数的にはザロファーが優勢であり、東北地方の某グループによる「安易な内固定で感染症例を作るな」という、AO骨折治療法の信者(プレーター&ネイラー)にとっては耳が痛い口演が続きました(笑)。私の憶測ではプレート固定や髄内釘固定後の悲惨な感染例は、結局最終的にザロファーのいる施設に紹介となってしまうため、「トラブルに対処できないなら、初めから内固定なんかするな!」という思いが根底にあるのだと思います。私の施設ではどうなのかと聞かれれば、脛骨遠位部骨折の患者さんは多分こうなります…

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②イリザロフ法の歴史… 日本におけるイリザロフ法の歴史を分かりやすく説明していただきました。先人の多くの功績のおかげで、それまで治療法がなくお手上げだった骨関節の難治性感染や変形が治療可能となりました。現在進行形で話題(問題?)となっているSTAP細胞と同様、旧ソ連で開発された魔訶不思議な治療法は、なかなか西側諸国には受け入れらなかったようです。私が整形外科医の駆け出しだった頃(15年以上前)、当時の指導医がイリザロフ法をイラザロフ法(要らない)といって、全く評価していなかったのを覚えています。が、膝や足関節の骨切り術でこの不思議な大人のLEGO(おもちゃ)を使ってみると、その魅力になぜか引き込まれてしまいます。これって宗教にはまるのと同じ感じでしょうか(宗教にはハマったことはありませんが… )。

③重度四肢外傷の治療… 最低でも2回で90%を決めるデブリドマン、fix and flap、NPWT (negative pressure wound therapy)、外傷センターの設立の必要性などが主な口演内容でした。現在の重度四肢外傷治療の主流(?)であるconversion法と異なる、fix and flap法は大変興味深いものでした。NPWTもなるべくならお世話になりたくないものです。

③なにわ仮骨シンポジウム… 低出力超音波パルス(LIPUS)やBMP-2、PTHなどを用いた骨形成促進が題目でした。欧米では既に脊椎固定術などでBMP-2が使用されていますが、コストの面などいろいろと問題があるようです。最終的には創外固定器で延長などしなくても、骨が形成される薬が理想なのかもしれません。当院には自前のLIPUS(オステオトロンⅢ)があるので、仮骨延長術や足関節骨切り術の際には、患者さんにサービスで毎日20分照射しています。

2日目… 江坂駅から吹田駅まで1時間ほどの往復走の後、会場入りしました。

④感染・偽関節… 症例報告が大半でしたが、各施設で大変苦労された症例が提示されていました。昔から言われてることですが「偽関節の最大の治療法は偽関節をつくらないこと」。感染・偽関節は患者および術者にとって最大の不幸なので、改めて肝に銘じたいものです。

⑤抗菌ヨードコーティングインプラントの開発… カフェイン法とならび金沢大学の売りであるiImplantのお話でした。以前中部整災でも拝聴したことがある内容でしたが、常識を覆す新しいインプラントの使用法に改めて驚きました。5年後くらいには市販化されるようですが、また骨折・感染治療のパラダイムシフトが起きる気がします。

⑥内視鏡的椎体形成術… なぜに創外固定学会に内視鏡的椎体形成術? でしたが、ここ数年脊椎外科関連の口演はほとんど聴いた試しがなかったので内容的には新鮮でした。流行りのBKP (baloon kyphoplasty)が骨セメントを用いるのに対し、内視鏡的椎体形成術はリン酸カルシウムペースト(CPC: バイオペックス)を使用します。前者の特徴は骨セメントは数十分で固まるので後療法は簡便、しかし隣接椎体の圧潰が問題。後者の特徴はCPCが固まるの2日間はベット上安静が必要だが、程よい硬さで隣接椎体の問題が少ない… と力説されていました。たまに専門分野以外の話を聞くと、医学は日進月歩で勉強しないと浦島太郎となることを痛感しました。

2日間の日程を終えた感想は、ヘキサポット創外固定器が新たに3種(Smith & Nephew、Orthofix、MDM)となった以外は少し出尽くした感があるなぁと感じました。次なるトピックスはなんでしょうか? 誰か変形矯正を自動でやってくれる創外固定器とか開発すれば、STAP細胞とまでは行かなくてもかなりのインパクトにはなりそうですが… そんなことを考えながら学会を無事終えました。

幸い最近は創外固定のお世話になることもないので、そろそろ医局のロッカーで寝ているTalor Spatial FrameとModular External Fixationにお呼びがかかる頃かもしれません。例年だと年1例は嫌でも使わらざる得ないケースに出くわすのですが… 。

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