今回もまたまたマニアックな内容で恐縮です。変形性膝関節症に対する楔状開大型高位脛骨骨切り術は既に確立された術式ですが、①脛骨後方傾斜増大、②膝蓋骨低位、③外側皮質骨折、④矯正不足などの問題点があります。特に①、③および④は術後成績不良に直結するため絶対に避けなければなりません。多くの症例を経験すると手術手技書通りに近位脛腓関節中央に向かって斜めに骨切りをすると、時に大きな開大が必要となり、大柄な患者では矯正不足となる可能性があるということに気づきました。そのため当科では現在近位脛腓関節中央に向かう骨切り線が最短となる位置で、なるべく水平に骨切りを行っています。上の3枚のレントゲン写真を見ると、第1世代から第3世代にかけて骨切り線が徐々に短く、水平になっているのが分かると思います。実際に骨開大部に挿入する楔状人工骨補填剤の大きさも、以前と比べて格段に小さくなっており、効率の良い矯正が可能となっております。
この方法のメリットには、①最小限の開大で効率良く目標とするアライメントを獲得可能、②開大に伴う後方傾斜角の増大を最小限に抑える、③術後の脚長差および屈曲拘縮のリスクを低減させることなどが挙げられます。しかし、反対にデメリットとして、骨切り線が短いと骨癒合に不利となりますが、現在のところ全例骨癒合を得ており、楔状人工骨補填剤を使用すれば、固定性に関しては全く問題ないと考えています。
このように膝や足関節周囲の楔状開大型骨切り術における骨切り線の位置は非常に重要であり、手術にあたっては細心の注意が必要です。