足の外科虎の穴

足の外科を生業とする整形外科医 小林勇人のホームページ

TEL.054-643-1230

〒426-8662 静岡県藤枝市水上123-1

外反母趾セミナー

外反母趾セミナー

DCIM0068

9月29日(日)に東京カンファレンスセンター品川で開催された外反母趾セミナー(Depuy Synthes主催)に参加してきました。全国から「足の外科医」100名以上が招待され、会場はほぼ満席と大変盛況でした。このセミナーの趣旨は各種外反母趾手術の大家による講演ですが、究極の目的は明らかにAngular stable X-plateと2-hole plateの販売促進であり、近年足の外科用インプラントを開発したDepuy Synthes社、Stryker社、Wright Medical社の3つどもえの競争が裏にあると思われます。

DCIM0067

講演①は「外反母趾の基礎と病態」で独協医大の大関先生が分かりやすく説明されました。私は外反母趾オタクではないので、「MTP関節の半月板」など目から鱗の話もあり、大変有意義でした。

講演②は「中足骨水平骨切り術」で奈良医大の田中先生の講演でした。過去に何回か聴いたあるのですが、イントロダクションの「DMAが大きい症例に対するMann法に対し、その昔Mann先生がhelplessであると白旗を挙げた」という逸話では今回も会場に笑いが漏れました。「Scarf法」を改良した術式は矯正力が大きく、DLMO法で対応できない重度の外反母趾(HVA 40-50°)に対し、今後「Mann法」に代わって「水平骨切り術」を考慮したいと思いました。

講演③は「リウマチの外反母趾」で大阪南医療センターの橋本先生の講演でした。ランチョンセミナーを兼ねており、「なだ万」の美味しいお弁当付きでした。私は一応「日本リウマチ学会指導医」なのですが、もともと非炎症性疾患(変形性関節症)が本当の専門(?)であり、炎症性疾患(関節リウマチ)の手術は正直次点という状態でした。骨が脆弱なリウマチ患者さんの関節(骨頭)温存にこだわった手術は秀逸でしたが、隠れスポンサーであるイーライ・リリー社の高価なフォルテオを骨癒合促進の目的で投与しており、自分的には✖▽◆◎”(-“”-)”という印象でした。

講演④は「Mann法」でシミズ病院の奥田先生の講演でした。奥田先生といえば「Round sign (JBJS-Am 2007)」が有名で、最近はどの施設でも手術の際に、中足骨頭の「Round徴候」に配慮がなされているので、全国的に外反母趾の術後再発率が低下しているんじゃないかと思います。奥田先生は「loss of correction」対策にLocking X-plateのx-smallを使用しており(smallではデカ過ぎ)、かなり早期荷重を行っているようでした。当院で主に行っているDLMO法は時に変形癒合が問題となるので、Acutrak 2 Miniを骨切り部に追加するなど対策の必要性を痛感しました。

講演⑤は「Lapidus法」で聖マリアンナ医大の仁木先生の講演でした。私は「Lapidus法」の経験がない(見たこともない)のですが、いつも通りの理路整然としたスライドには脱帽でした。講演の後半に後足部障害(成人期扁平足: PTTD)を合併した外反母趾に、踵骨隆起内側移動術(MDCO)や三関節固定術を行った症例を紹介していたので、私から「内側支柱が短縮するLapidus法では、外側支柱延長術(LCL)は前足部がover correctionとなるため禁忌なのですか?」と質問させて頂きました。お答えは「LCLでも問題はなく、PTTDのstageによってMDCOかLCLを決定する」とのことでした。仁木先生、ありがとうございました。

最後にcase discussionがあり、3名の先生方がプレゼンテーションをしていました。印象的だったのが「中足骨水平骨切り術後の骨頭壊死」と「高度のリスフラン関節不安定症」の症例でした。前者は「関節固定術」または「セラミック人工趾関節(大関先生)」、後者は「Lapidus法+ Weil法」が良さそうだというのが、会場の結論でした。

今回のセミナーでは半日外反母趾だらけでお腹いっぱいになりましたが、山口大のO先生や岐阜のW先生とも会うことができ、大変有意義な時間を過ごせました。10月末の日本足の外科学会@仙台が今から楽しみです(スライド作成がブルーだっー… )。

最後に素朴な疑問をひとつ。「今回のセミナーで今流行りのDLMO法がなかったのはなぜ?」Locking X-plateを使うはずもないDLMO法がこれ以上全国に広まるとメーカーにとって都合が悪いのでは… と勘ぐってしまうのは私だけでしょうか。

DCIM0069

« »